さて、今回(こんかい)もみんなといっしょに時や時間にかかわりのある場所(ばしょ)をたずねていこうと思う(おもう)のだが、準備(じゅんび)はよろしいか。よいしょ。

今回は、前回このページで予告(よこく)したとおり、日本なのだな。
日本のどこかというと、兵庫県明石市(ひょうごけんあかしし)なのだな 。
明石市というのは、日本の標準時(ひょうじゅんじ)をきめてる東経(とうけい)135°(ど)の子午線(しごせん/てんくうを南北によこぎる経線)がとおっている場所なのだな。

さて、そんなに時間にかんけいのある場所なら、きっと太陽(たいよう)の動き(うごき)や、星の動きをかんそくする天文台(てんもんだい)があるだろうとみんな思うんじゃないのかな。
けれど、明石天文台(あかしてんもんだい)というのは、じつはないのだな。きみたちのお父さん、お母さんにしつもんしてみたら「ある」っていうお父さん、お母さんのほうが多い(おおい)んじゃないかな。人間(にんげん)の思い込み(おもいこみ)というのはおもしろいものなのだな。
明石市の135°の子午線の上にたっているのは天文台ではないけれど「明石市立天文科学館(あかししりつてんもんかがくかん)というたてものなのだな。よいしょ。よいしょ。

日本が標準時に東経135°の子午線を使い(つかい)始めた(はじめた)のは、1888年(明治21年)1月1日なのだな。これは1885年にアメリカのワシントンでひらかれた国際子午線会議(こくさいしごせんかいぎ)で、イギリスのグリニッジ天文台をとおる子午線を世界の経度(けいど)のきじゅんとして、世界の時刻(じこく)は24時間制(じかんせい)をとるということがきまったのだな。そして、その会議(かいぎ)にでていた明治政府(めいじせいふ)の人たちが、東経135°の子午線を日本の標準時とすることにきめたのだな。

でも、ここで前回の「時の地理」で学んだ(まなんだ)「グリニッジ天文台」のことを少し(すこし)おもいだしてほしいのだな。世界各国(せかいかっこく)の天文台が太陽の南中時刻(なんちゅうじこく)をかんそくして各地(かくち)の標準時をきめていたむかしは、グリニッジ天文台が大活躍(だいかつやく)していたのだな。しかし地球の自転(じてん)に誤差(ごさ)があることがわかって、1972年に原子時計がきざむ時計をきじゅんに世界の標準時がきめられるようになってから「グリニッジ天文台」の役目(やくめ)がなくなってしまったという話なのだな。


原子時計が使われ始めてから、日本の標準時をきめる仕事(しごと)は、東京の三鷹(みたか)にある国立天文台(こくりつてんもんだい)がやっていて、岩手県水沢市(いわてけんみずさわし)の国立天文台水沢観測(みずさわかんそく)センターにおいてある、何台(なんだい)かの原子時計の時間をもとに、地球の自転(じてん/ちきゅうのまわるうごき)、公転(こうてん/ちきゅうが太陽のまわりをまわるうごき)とのズレを「うるう秒」でなおして、明石市の上(うえ)をとおる東経135°の日本標準時をきめているのだな。
ほかの国もやりかたは同じ同じ(おなじ)なのだけれど、いろいろな国がばらばらに「うるう秒」をいれてなおしていくと、世界の標準時がずれてしまうことがおきかねないので、その役目(やくめ)をパリの国際時報局(こくさいじほうきょく)がやっているのだな。
今の日本の標準時は、そのパリの国際時報局できちんと調整(ちょうせい)された、世界の標準時を9時間進めた(すすめた)ものとしているのだな。

でも、明石に住む(すむ)人たちは、標準時の町であることをとてもほこりに思っていて、6月10日の時の記念日(ときのきねんび)には、「時」をテーマにしたいろいろなイベントをやっているのだな。それから明石市立天文科学館(あかししてんもんかがくかん)では、「時」や「天文(てんもん)」について、みんなにもわかりやすい楽しい(たのしい)展示(てんじ)をやっているのだな。近く(ちかく)のお友だちはぜひのぞいてみてほしいのだな。ふー、どっこいしょ。

今回は、日本の明石市にきたつもりが、イギリスにいったり、最後(さいご)はフランスのパリにまで話がとんでしまったのだな。次回(じかい)は、ほんとのほんとの日本なのだな。
楽しみにまっててくれるとうれしいのだな。

明石市立天文科学館は、こちら。

2000年9月号