さぁ、はじめるぞぉ。注目(ちゅうもく)!
今回(こんかい)はいよいよ先生(せんせい)の得意(とくい)なところの話(はなし)だぞぉ。
今(いま)は学校(がっこう)のスポーツ大会(たいかい)でも使われ(つかわれ)たり、みんなの持って(もって)いる時計(とけい)にもついているストップウォッチだけど、これがスポーツの世界(せかい)で使われるようになったのは、1822年のことなんだぞぉ。
でも、この時(とき)には、競技(きょうぎ)の順位 (じゅんい)を決める(きめる)のに使われたんじゃなくて、馬術競技(ばじゅつきょうぎ/馬にのっておこなう競技)で、決められた時間のなかで、終わった(おわった)かどうかを知る(しる)ために、お医者(いしゃ)さんの持っていた時計を使っただけのことだったんだぞぉ。
そのあと、1896年に開かれた(ひらかれた)最初(さいしょ)の近代(きんだい)オリンピックの、男子100メートル走(だんし100メートルそう)の優勝(ゆうしょう)タイムが12秒(びょう)という記録(きろく)が残って(のこって)いるんだけど、この時には、秒より小さな(ちいさな)単位(たんい)を計れる(はかれる)ストップウォッチがまだなかったので、優勝(ゆうしょう)した選手(せんしゅ)は、だれが見ても(みても)ぶっちぎりの1等賞(いっとうしょう)だったので、そんなストップウォッチでも問題(もんだい)はなかったんだ。
ところが、ところが。オリンピックに出て(でて)くる選手のレベルがあがってくると、人の目(め)にたよって1位
、2位とかを決めることがむずかしくなってきたんだ。わかるかぁ。
1920年のアントワープ・オリンピック(ベルギー)の時には、すでに1秒の5分の1(5ぶんの1)まで計ることができるストップウォッチがあったんだけど、大きな(おおきな)身ぶり(みぶり)でゴールした選手が優勝と発表(はっぴょう)されたんだ。だけど、この時の1位の選手と2位の選手は同じタイムだったんだ。大変(たいへん)なことだよね。
金(きん)メダルか、銀(ぎん)メダルか? 選手にとっては大きな違い(ちがい)だからなぁ。
これが原因(げんいん)になって、スポーツ競技での「正確(せいかく)で、確実(かくじつ)な計測(けいそく/時間をはかること)」が、大事(だいじ)な問題(もんだい)になったんだぞぉ。
そうしてむかえた1932年ロサンゼルス・オリンピック(アメリカ)では10分の1秒まで計れるストップウォッチが使われ(つかわれ)、1948年には写真判定(しゃしんはんてい/選手たちのゴールの瞬間(しゅんかん)を写真でとって決める(きめる)方法(ほうほう)」が使われるようになったんだけど、タイムを計るのは、あいかわらず人間がやっていたので、順位とタイムの順番(じゅんばん)が入れ替わる(いれかわる)こともあったんだぞぉ。
言いすぎかもしれないけれど、そんないいかげんな計り方が、大きくかわったのが、1964年の東京(とうきょう)オリンピックなんだぞぉ。
この時に初めて(はじめて)、人ではなく、すべてを自動(じどう)で計ることのできる電子計測(でんしけいそく)システムが作られ(つくられ)100分の1秒単位で、正確に計れるスポーツ計時(けいじ)システムが使われたんだぞぉ。
このシステムを作ったのはセイコーグループなんだぞぉ。


このシステムは、陸上(りくじょう)だけではなく、水泳(すいえい)や自転車(じてんしゃ)、ボブスレー、スピードスケートなど、タイムをあらそうものに、幅広く(はばひろく)使われるようになって、スポーツの世界(せかい)は、今(いま)や100分の1秒の差(さ)で、泣いたり(ないたり)、笑ったり(わらったり)するドラマの世界にかわってしまったんだぞぉ。
すごいよなぁ、スポーツの世界は。
はーい、今回はここまで。みんなげんきで、次回(じかい)も会おう(あおう)なぁ。
2000年7月号